16世紀スペイン(およびちょっとだけドイツ)を舞台とした史劇にして、ロマン主義の時代が訪れる、まさにその転換期に登場した画期的戯曲。「三一致の法則」や「句またぎの禁忌」といった古典派演劇の規範や劇作法を逸脱し、大いに物議(「エルナニ合戦」)をかもし出したことでも有名。
これをもとにジュゼッペ・ヴェルディもオペラを作曲している。
無論、私は(そしてほとんどの現代日本人は)ユゴーの同時代人ではないので、この作品がその時代にもっていたアクチュアリティを感得することはできないわけで、いわゆる「古典」として接せざるを得ないのだけども。
訳者が比較文明論を専攻しているためか、解説もそういう観点から(近代に固有の「知」の様式とその諸相をユゴーの作品から探る)書かれている点が秀逸にして特徴的。文庫で読もうとしたら、昔の中公文庫版を古書店で探すぐらいしかないので、この文庫を読まれてみては如何か。
最後に、フロイトが高貴さの顕れとして引用したセリフを。
「そうだ、我らの首には、ああ、王よ、あなたの前で着帽のまま切り落とされる権利がある!」
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エルナニ (岩波文庫)